はじめに
皆さんこんにちは。私です。奇跡みたいな更新頻度ですね。
さて我らがイングランドプレミアリーグも多くのチームが第8節まで消化。
再びロックダウンかという不穏な情報もありましたが、なんとか代表ウィークまではこぎつけました。
そんな中チェルシーはシェフィールドUと対決。1点を先制されましたがその後は4得点。
終わってみれば完勝、そして今季リーグ初の連勝を飾りました。
今日はその試合で好プレーを見せたツィエクについてです。
左足の魔術師
出だしは悪くなかった。
開始直後こそブレイズのプレッシャーに晒されたが、すぐさま反撃。
ベン・チルウェルのシュートで早くも決定機を創出した。
ところがセットプレーから失点してしまう。
ショートコーナーで深い位置を取られると、最後は昨季チェルシー戦で2Gを奪ったデイビッド・マクゴールドリック。
ここまで5試合連続のクリーンシートを達成していたエドゥアール・メンディもゴール前でのフリックに反応することはできなかった。
開幕直後であれば慌て、バタつき、失点を重ねていたかもしれない。
しかしここでチェルシーは崩れなかった。成熟の兆しが見えるチームは、ボールポゼッションを高め、圧をかける。
相手を押し込む中で、久しぶりの先発起用となったマテオ・コバチッチがスペースに走り出す。
「左足の魔術師」はそれを見逃さなかった。
帰還
―ハキム・ツィエクはチェルシーに加入する―
アヤックスで確固たる地位を築き、欧州CLで鮮烈な輝きを放ったレフティーの加入が発表されたのは今年の2月末だ。
マタイス・デリフト(現ユベントス)、フレンキー・デヨンク(現バルセロナ)らと共に、欧州の強豪チームを次々と撃破。
「ヤング・アヤックス」の中核として躍動した。
ユベントスやレアル・マドリードといった各国王者を破りCLベスト4でシーズンを終えると、多くの有望株が欧州列強へと旅立った。
当然ツィエクにもバイエルンらが関心を示していたが、結果的に残留した。
その中で迎えた新シーズン、アヤックスはチェルシーとCLで相まみえる。
特にスタンフォードブリッジでの一戦は4-4という壮絶な打ち合いに。
ツィエクもコーナー付近からの強烈な左足FKを沈めるなど、類い稀な攻撃センスを見せつけた。
26という年齢こそネックになっていたが、当時から欧州5大リーグへの挑戦は既定事項。
COVID-19による各クラブの補強縮小がなければ、大争奪戦が繰り広げられていたことは想像に難くない。
「わずか」50億で済んだこと、(合流こそ半年ずれ込んだが)冬で交渉が完結したことは僥倖だった。
結果として今夏早々での合流となり、異例の短さとなったプレシーズンを十全に使うことができた。
そして数少ないPSMとなったブライトン戦では、得意の左足から決定的なクロスを供給。
同じく新戦力、ティモ・ヴェルナーの得点につなげ、期待は確信へと変わった。
ところがこの試合で膝を負傷。
開幕から数試合を欠場する。
その間に他の新戦力が出場時間を延ばし、チームへフィット。
前述のヴェルナーやカイ・ハヴァーツらが序盤の攻撃を牽引。
一方で整備が遅れていた守備陣もチアゴ・シウバを筆頭に安定感を増し、セビージャ、マンチェスターUの難敵相手にスコアレスドロー。
堅守を取り戻し、勝利至上の4連戦を前にハキム・ツィエクがスタメンに帰ってきた。
新しい武器
4連戦最終戦、先手を取られたチェルシー。
動揺を見せずにチャンスをボールを回し、穴を伺う。そしてその穴を穿ったのがコバチッチのランニングであり魔術師の左足だった。
ツィエクの浮き球のパスに抜け出し、折り返したコバチッチ。
反応したのが逞しさを増すタミー・エイブラハム。
右足で捻じ込み試合を振り出しに戻した。
モロッコ代表の右WGがさらに本領発揮したのが34分。
直前に上げていた危険なクロスを再現するが如く再びエリア内に鋭いボール。
チルウェルは満足なシュート体勢をとれなかったものの、高品質のボールは体にあてるだけでゴールに吸い込まれた。
そして「再現性」という点から圧巻だったのが77分。
1年前と同じポジション。あの日ケパ・アリサバラガを強襲したのとまったく同じ軌道でゴールに向かったボールは、チェルシーが手にした新たな武器として、この日の3点目を演出した。
相乗効果
直後にもヴェルナーに決定的なラストパスを供給するなど、その左足は前評判に勝るとも劣らない。
今夏早くから合流していたこともあり、連携も数試合の実戦で十分だったか。
試合終了間際には途中出場のオリビエ・ジルーとショートパスを交換し、エリア内にラストパス。
結果として繋がりはしなかったが、敵を翻弄する小気味よいパスワークに、茶目っ気のある笑みを浮かべた。
バーンリー戦で自身へアシストを返したエイブラハムとの相性も悪くない。
また裏抜けを得意とするヴェルナーや、ゴール前への飛込みに定評のあるクリスティアン・プリシッチにも、彼のインスイングクロスはベストマッチだ。
加えて後列の右SBともいい関係を築く。
大外レーンからのクロスが武器のリース・ジェームズは、カットインでスペースを作ってくれる逆足WGの方がやりやすそうに見える。
まだ実戦で組んだことはないが、経験豊富なアスピリクエタに心配は無用だろう。
初ゴールをプレゼントされたチアゴ・シウバや、今季セットプレーの得点源となっているクルト・ズマは(昨季からは想像もつかないほど改善された)精度の高いCKを既に感じているはず。
そしてビルドアップ時の貢献も忘れてはならない。
これまでペドロ・ロドリゲスが自陣にドリブルで運んでいたボールを、一蹴りで逆サイドのオープンスペースに持っていけるのは、チェルシーの新たな加速装置になっている。
単体でのクオリティもさることながら、周りとの連携でさらにその破壊力は増す。
そして周りの能力もさらに引き上げている。
最初のラストピース
チェルシーというクラブはこれまで多くのWGが獲得してきたが、意外にもレフティーは少ない。
恐らくツィエクレベルの左利きとなると、ファン・マヌエル・マタまで遡るのではないか。
プレミアのアシスト王にも輝き、チェルシー最大のタイトルを獲得したスペイン人に重ねてしまうのも無理ない話だろう。
今夏最初の補強ながら最後にやってきた、ハキム・ツィエク。「モロッコの魔術師」がタイトルへのラストピースだ。
(なおモハメド・サラーを獲得WGに入れるかは個々人の判定に任せるとする)
~おしまい~
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