はじめに
ブーイングが効果的な選手と、逆に力を与えてしまう選手がいる。
得点者
ウォルバーハンプトン 2-6 チェルシー
得点:前半27分 マテウス・クーニャ、前半51分 スタンド・ラーセン(ウォルバーハンプトン)/前半2分 ニコラス・ジャクソン、前半45分 コール・パーマー、後半4分、後半13分 、後半18分 ノニ・マドゥエケ、後半35分 ジョアン・フェリックス(チェルシー)
試合前
開幕節で昨季王者マンチェスターシティと激突したチェルシー。
結果は0‐2の完敗。
PSMに比べれば幾分マシにはなっていたが、それでも成熟度の差を如実に見せつけられた試合だった。
バックラインの脆さと繋ぎの不安は懸念通りで、アーリング・ハーランドという絶対的CFの決定力と、マテオ・コバチッチの恩返しミドルの前に屈した。
勢いに乗る開幕節、とはいかず24‐25シーズンは黒星でのスタート。
一方移籍市場では再びのビッグディールが成立する。
コナー・ギャラガーのアトレティコ・マドリード移籍が決定し、代わりにジョアン・フェリックスがチェルシーに帰還。
過去レンタルで在籍していたこともあるテクニシャンがスタンフォードブリッジに凱旋した。
今週金曜にはカンファレンスリーグのプレーオフ、セルヴェット戦が行われ、そのフェリックスもHT中に挨拶。
試合はというと、スイスのチーム相手に2‐0で今季公式戦初勝利を挙げた。
新加入のGKヨルゲンセンが活躍し、攻撃陣ではクリストファー・エンクンクとノニ・マドゥエケが得点。
一つ勝利の欲しいチームには大きい試合となっただろう。
一方で格下相手に内容は決して褒められたものではなく、手放しでは喜べないのもまた事実であり、改善が求められる。
こちらも勝利をつかみたいリーグ戦、第2節ではウルブズと激突。
余談だが金曜に多いカンファレンスリーグの影響で、日曜の試合が今季は多くなりそうである。
さてウルブズは今夏の新戦力、ペドロ・ネトにとってはいきなりの古巣戦。
チェルシー同様開幕節を落としたウルブズは移籍市場でも苦戦気味である。
ネトに加え、守備の要であったキルマンもウェストハムに移籍。
穴埋めの補強も今一つ進んでおらず、今季は降格候補にあげられることもある。
同じく開幕節を落としたものの、市場での動きが対照的なチェルシーとしては、選手層の厚さを見せたいところ。
双方今季リーグ戦初勝利を狙う。
チェルシーは前節同様4-2-3-1を選択。
好パフォーマンスをシティ戦で見せていたラヴィアは再びの離脱で、相変わらずのスぺ体質を露呈した。
新加入のジョアン・フェリックス、ペドロ・ネトはベンチから出番を伺い、左には10番のムドリクが先発。
右はインスタグラムのアカウントを間違え、ウォルバーハンプトン市を貶す投稿をするという珍不祥事を犯したノニ・マドゥエケ。
不安定さを見せたバックラインおよびGKは前節と同じで、改善の度合いを測るには十分な相手だろう。
選手採点
GK
ロベルト・サンチェス 6.0
ザル過ぎるエリア内とバイタル守備のあおりで2失点。
どちらも彼の目の前に来た時にはノーチャンスであり非常に気の毒だった。
止められる余地のあるシュートはしっかりと抑え、ハイボール処理も安定。
また2点目は自身のゴールキックが起点となるなど、キック力を生かし攻撃面でも大きな活躍。
複数失点ではあるが、及第点として良いだろう。
ポジションが危ぶまれる中、ポジティブな一戦となった。
DF
ウェズレイ・フォファナ 5.0
チェルシーの守備を任せられる器ではない。
ボールウォッチャーになり、危険な場面を埋めることができない。
ゲームをコントロールできるようになった後半は余裕が生まれたが、拮抗した時間帯でのプレーは大いに不安。
セットプレーの守備も含め、CB陣は残念ながらトップレベルには至っていないという判断にせざるをえない。
ダイナミックな持ち上がりは1つはあったが、それ以外に組み立てでの貢献も薄かった印象。
1年のブランクがあるとはいえ、よりパフォーマンスを上げないとかなり苦しい。
レヴィ・コルウィル 5.5
フォファナ同様緩い守備を締めることができず、軽い守備やマークミスがちらほらと見られる点は同じ課題。
今日は長身FWが相手になんとか戦い抜いた点や、ギリギリのシュートブロックを考慮して少し上とした。
左足での効果的な楔は特に後半からは何度か差し込めており、前線に強くつけることでビッグチャンスになることも。
左側への展開は申し分ないのだが、立ち方でキック方向がかなり限られる場合があるのはやや気になる。
まあ攻撃面での活躍はさておき、いったんは守備でより大きな貢献を求めたい。
マルク・ククレジャ 6.0
この日もアグレッシブなプレーでファン・ヒチャンに仕事をさせず。
ビルドアップでもよくボールを引き出し、中盤や前線に丁寧に繋げた。
決して整備されているとは言えなかった前半はかなりトランジションに苦戦していたが、特に後半は落ち着いたプレーで貢献。
躍動する攻撃的な選手を後ろから支え、バックラインでウルブズを迎撃。
現状一番守備が計算できる選手である。
EUROで一皮むけた印象がある。
マロ・グスト 5.5
偽SBとして中盤に入るが、組み立ての貢献が少なく、守備ではむしろ空けたスペースが大きな穴に。
1失点目では戻り切れなかったのか、チームとして決まっていなかったのか、完全に自身のサイドでフリーが生まれてしまう。
彼の適性も踏まえ、偽SBがどうにも機能しているようには見えず。
後半はパーマーのサポートやインテンシティの改善もあり優位をとるが、本来は偽SBの段階で中盤は制圧したいところ。
あんまり彼の能力的に、偽SBが向いているという気もしないが。
今後の使い方はよく考えたい
MF
モイセス・カイセド 5.5
疲労からか軽率なミスが相次ぐ。
不用意なロストからウルブズの推進力をつけさせてしまい、前半はチームを落ち着かせることができなかった。
後半からはプレーの精度を高め、球際でも強さを発揮。
パフォーマンスを上げてきたところで、接触で無念の負傷交代。
ラヴィアもサイレント離脱する中、軽傷であることを祈る。
エンソ・フェルナンデス 6.0
球際の弱さからウルブズの進行と危険地域への浸透を防げず。
ビルドアップでは機転の利いたプレーを見せるが、特に前半はトータルの収支では微妙なラインだった。
走れる選手ではあるが、動きながらのタックルが上手くないというのもある。
後半はカイセドの復調や点差がついたこともあり、元来の良さが出始めた。
加えて自身もアンカーのように深い位置でのプレーの方が色々とやりやすそう。
リード後は長短のキックで上手くリズムを作り、試合を上手くコントロール。
コール・パーマー 8.0
トップ下ではやや窮屈気味のプレーのように見える。
それでも前半終了間際に超絶技巧のループシュートを沈め、見事な今季初ゴール。
後半はマドゥエケと右サイドを完全に掌握し、丁寧なパスでマドゥエケの3得点をすべて演出。
途中からマドゥエケと縦に並ぶような位置取りで中盤の出口と攻撃の起点に。
マドゥエケの決定力が光り重ねたアシストでもあるが、適切な位置・強さ・タイミングで出すのはさすがの技術の高さだ。
FW
ノニ・マドゥエケ 8.0
試合前にインスタグラムのアカウントを間違え、ウルブズのファンを激怒させる。
それでもプレーの判断は素晴らしく、アイヌーリ相手に試合通じて絶対的な優位に立つ。
後半に圧巻の3得点をマークし、ブーイングを意に介さない躍動。
先制点に繋がるCKの獲得が霞んでいる。
ドリブルでは敵なしになった昨季から、今季はフィニッシュも進化。
右でも左でも強烈なシュートを放てるようになり、いよいよ手が付けられない存在になってきた。
ミハイロ・ムドリク 5.5
公開説教の効果もあったか、周りを見ながらボールをデリバリー。
しかし初手のプレー判断は良かったが、二手目を誤ることが多く、効果的なプレーには至らず。
ジャクソンやエンソら、近い選手とのコンビネーションも決まらなかった。
満足のいく出来とは程遠く、前半のみでネトと交代。
ニコラス・ジャクソン 7.0
CKから落ち着いたヘッドで開始早々の先制点を奪う。
マドゥエケのヘイトを分散させる煽りで自身もブーイングの対象に。
それでも前半終了間際には高い身体能力を生かしたアシストも記録し、しっかりと2得点に絡む。
後半は起点作りやポストプレー、フリックでも存在感を増し、強力なMF陣を生かす役割も全う。
大差がついた後半途中に、お役御免でベンチへ下がる。
交代選手
ペドロ・ネト 6.5
後半開始から左サイドで登場。
マドゥエケやジャクソンがブーイングを貰う中、古巣からは暖かい対応。
球際の強さを生かした突破やパーマーらとの連携を見せたが、自身で左足を振り切れるシーンはなかった。
それでも縦への抜け出しから丁寧なクロスでフェリックスのゴールをアシスト。
まずは一つ結果をもたらし、序列が決まり切らない左サイドでのアピールに成功した。
ジョアン・フェリックス 6.5
ジャクソンに代わり二度目のチェルシーデビュー。
0トップに近い立ち位置から中盤にも入り、相変わらずのテクニックを魅せる。
すると交代から早々に、見事なダイレクトシュートで初ゴールもマーク。
ポッター末期唯一の希望は守備に走るシーンもあり、アトレティコ産であることを思い出させた。
新たなチェルシーでも輝きを放ちそうだ。
キアナン・デューズバリー・ホール 5.0
カイセドの負傷により途中出場。
DFラインの前で危険なパスミスを犯すなど、安定感のない出来。
新戦力ばかりなのもあるだろうが、ここまでは粗さの方が目立つ序盤戦。
中盤の駒が少ないだけに、早めに戦力になって欲しいが。
レナト・ヴェイガ 6.0
ククレジャに代わり途中出場。
大勢が決した中でのピッチインだったが、鋭い出足で印象的なプレー。
エンソやCB陣とボールハントに何度も絡んだ。
また高い技術で中盤を突破するなど器用な面も見せ、偽SBとしての適性もアピール。
ククレジャを休ませる以上のパフォーマンスだ。
クリストファー・エンクンク 6.0
パーマーの温存もあり、後半途中投入。
あまりにも贅沢な使い方。
0トップの立ち位置からよく走ったが、公式戦2戦連発とはならず。
攻撃陣が爆発しただけに、そろそろ自身も流れの中でゴールが欲しいか。
監督
エンツォ・マレスカ 6.5
前半はウルブズにお付き合いするような格好でオープンな試合に。
意図した展開ではなかったはずで、ビルドアップで試合をコントロールする方向とは真逆に進んだ。
偽SBもむしろ裏目に出るシーンや、曖昧なセットプレー守備など課題の改善はこの試合でも見られず。
それでもマドゥエケやパーマーを解き放ち、終わってみれば6得点の大勝。
積極起用した新戦力にも数字が生まれ、特に攻撃面では収穫の多い一戦となった。
終わりに
若手の獲得ばかりが批判されるチェルシーですが、やはりどんどんうまくなっていく選手を見るのは楽しいですね。
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