※本記事には新型コロナウイルスに関する記載がありますが、
・筆者は医療関係の専門家ではない
・出来る限り信憑性の高いソースから引用、明記しているものの一次情報ではない
・本記事は同ウイルスに対する予防・対策目的ではない
ことを踏まえたうえ、コロナウイルスに関する情報はご自身でご確認ください。
こんにちは。3年ぶりぐらいにブログ書いてる私です(嘘です)。
さてここまで更新頻度が下がってしまったのはひとえに新型コロナウイルス、COVID-19の影響によるものです。当方はサッカーファンが書くブログですので、日常からサッカーが消えてしまうと大いなるネタ不足に苦しむわけです。
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。5月17日現在で感染者は463万人を超えています。また我らがチェルシーのイギリスも約25万人の感染者と3万人超の死者が出ています(ソースはこちら)。
スポーツ界にも多大な影響を与えたCOVID-19の影響は、当然サッカー界でも大きく、各国のリーグ戦が中断することになりました。オランダのエールディビジ、フランスのリーグ・アンは19-20シーズン終了を正式決定しました。
そんな中、5月16日、5大リーグで最も早くドイツ・ブンデスリーガが再開。ドルトムトvsシャルケの一戦はドイツのみならず、世界中の注目を集める一戦となりました。今日はその一戦から「withコロナのフットボール」について話したいと思います。
世界中の注目を集めた再開
5月16日22:30(日本時間)。ブンデスリーガでも特に熱量が高まる「レヴィア(ルール)ダービー」ことドルトムントvsシャルケ、そのキックオフの笛が吹かれた。
しかし欧州屈指の規模と満席率を誇るドルトムントのホームスタジアム、「ジグナル・イドゥナ・パルク」に熱狂的なサポーターの姿はない。COVID-19の影響で無観客試合となったからだ。
私はブンデスリーガは普段から見ているわけではなく、またこの試合もハイライトでしか見ていない。しかし久々の生のフットボールを見ようと普段はDAZNで視聴している他リーグのサポーターも、ブンデスリーガの放映権を持つスカパーへの契約を検討していた。実際の数字は把握しかねるが、おそらく契約者は増加したのではないか。
試合は中断前まで好調を保っていた新星、エーリング・ホーランドの先制点を含む4得点でドルトムントが4-0の快勝。シャルケのサポーターには気の毒な再開初戦となったが、世界中にフットボールのスペクタクルさを再び示すには上々の始まりだったのではないか。
90分通してみたわけではないので断言は避けるが、どうやらシャルケの選手たちのコンディションはあまり整っていなかったようだ。コロナ以前のような激しさが戻るのはもう少し後になりそうだ。
ブンデスリーガ再開が与える示唆
ドイツの現状
さてブンデスリーガは再開しただが、ドイツで完全に新型コロナが終息したわけではない。総感染者は17万人を超え、8000人が命を落としている。新規感染者こそ減少傾向にあるが、5月17日現在でも500人超の感染が確認されているようだ。(ソースはこちら)
しかし全体的なトレンドを見ると、3月下旬~4月頭のピークは過ぎ去ったように感じられ、欧州の先陣を切る形でリスクを孕む経済活動を再開させた。
実際ロックダウン解除以降は感染者数がぶり返す傾向があったと英国BBCは指摘しており、数字的にもその可能性は高い(ソースはこちら)。
ただある種「覚悟の痛手」であるというのも現実的な部分ではないか。段階的とは言え規制緩和をしなければ病気以上のダメージを負う人はいる。(もちろん急激な感染増加が起きないことを前提に)
ブンデスリーガもこうした状況で再開された。人類史の中で初めてとなる「withコロナのフットボール」として。
究極的に言えばフットボールは娯楽である。なくてもほとんどの人は明日死にはしないし、再び人類史という言葉を持ち出せば、フットボールがなかった時間のほうが長い。
それでも再開したのは、これ以上大幅な収益減を耐えられないクラブが多いというのが厳然たる事実だろう。無観客とは言え放映権料で確保できる収益は大きいとバイエルンCEOのカール=ハインツ・ルンメニゲ氏は語っている。
しかし再開しても課題は山積みだ。過密日程になる選手、スタッフとの関係、大勢での練習、接触の避けられない試合、当然ながら感染した選手を隔離することも重要だ。ブンデスリーガが再開にあたって打ち出した指針からは今後のフットボールが大きく見えてくる。
「withコロナのフットボール」
afterコロナ/withコロナという言葉も随分なじみ深いものとなった。今回はコロナとの闘いが長期化するであろうという予測を採用し、withコロナという表現を使用している。
そんな環境下でブンデスリーガ再開のために徹底されたことは大きく分けて三つ。選手の感染を確実に把握すること、不必要な接触を極力避けること、そして選手のケアをすることだ。
まずは感染把握の徹底。もちろん感染しないことがベストではあるが、移動や接触、そして激しい運動による免疫力の低下が避けられないのがサッカー選手だ。そこでブンデスリーガは厳しい検査を義務付けている。
ゲームに関わる各クラブの選手、コーチングスタッフ、トレーナーが試合1週間前、そして試合前日までに2回のPCR検査を受けるのは絶対条件。
また選手、トレーナーらとプライベート環境で過ごす家族などに対しても最初に1回、そして残りのシーズンのほぼ半分を消化した時期に1回のタイミングで自発的にPCRテストを受けることを指示
もしテストを固辞した者は、同世帯に住む者が外界と接触する機会を書面で文書化し、対応する保護対策を説明する必要がある
ブンデスリーガ存続の危機から反転攻勢 厳格ガイドラインで立ち向かうより抜粋
見ての通り親族を含め、何度も検査を繰り返すことを明文化している。おそらく鎮静化までこの動きは各国スポーツ界でのデフォルトになるだろう。
実際ブンデス2部のドレスデンは5月9日に選手の感染者が判明。17日、24日の試合は延期となった。このように延期となる試合は今後相当数出るだろう。
続いて不必要な接触を極力避ける施策に関して。練習では各チームが少人数制であったり、換気の良い場所でトレーニングを行っているはずだ。しかし試合となればそうはいかない。ぶつかり合い自体は避けられないので、それ以外での接触は禁止している。
まずはお馴染みの選手の入場、整列がない。真剣勝負の前に一片の愛らしさをもたらすエスコートキッズやマスコットもいない。当然選手、審判同士の握手もない。
また「最初の得点者」ホーランド自身も戸惑いを語っていたように、ゴールパフォーマンスでの激しい接触もない。多くの選手たちが駆け寄り喜びを分かち合う図を見られるのは当分先のことになりそうだ。
そして一番大きな違いは無観客試合という点だ。12人目の選手とも称されるサポーターからの声援を受けることが選手は長い期間できない。いわゆる「三密」揃う空間ゆえに、やむを得ない。
とはいえ何度か無観客試合を見た結果、やはり物足りなさや迫力のなさは否めない。激昂するマリオ・バロテッリを誰が止めてくれるというのだろうか。
選手たちもこの点に特に違和感を感じるようで、モナコのMFセスク・ファブレガスは「トレーニングマッチのようだ」と語っている。
またブンデスリーガは場合に応じては中立地での開催も可能にしている。サポーターの声援を受けられないことは、特にホームでの戦いを重視し、戦力的に劣る下位チームや昇格チームからの不満の声が少なからず上がっている。
最後に選手のケアの徹底だ。ブンデスリーガでは5人の交代が認められるようになった。今後の過密日程の対策として選手の1試合当たりの負担を減らす考えだ。
もちろん試合で感染を避けるケアも徹底している。ロッカールームでは距離を取り、マスク着用、交代でピッチから出れば即座にマスクが渡される。
選手たちはロッカールームやスタジアム内動線でのマスク着用を義務付けられ、ゴールキーパー、フィールドプレーヤー、控え選手などで分けて、ロッカールームの使用やスタジアム内での移動も人数が制限される。試合中の給水も各自専用のボトルが充てがわれ、共有することはできない
ブンデスリーガ存続の危機から反転攻勢 厳格ガイドラインで立ち向かうより抜粋
ただし一方で選手への準備期間は充分であったとは言い難い。先述したようにシャルケはフィットネスを整えられないまま再開を迎えてしまったようだ。当然こうした事態はケガにもつながる。
ブンデスリーガはウィンターブレイクがあり、多くの選手たちが「シーズン中の長期休暇」に関する知識や経験は深かったはずだ。それでもやはりこの状況で体を元に戻すのは難儀であることがわかった。
特に肉弾戦の激しいプレミアリーグなどは、フランク・ランパード監督(チェルシー)が提唱するように入念な準備期間を設けないと多くの選手を壊してしまうかもしれない。
フットボールはどう変わっていくのか
こうしたブンデスリーガの対策は恐らく各国リーグにも模倣されるはずだ。(もちろん対策が不完全で、感染者が急増となれば話は別だが)
ではいつ「あの頃」のサッカーは帰ってくるのか。恐らくではあるが、この措置が解除される順番は各国で取った対策の順番とちょうど逆になるだろう。
すなわち、無観客試合→握手等の撤廃→試合の中断→練習の中断という流れの逆を辿っていくのではないか。恐らくサポーターが同じ空間で戦える日々は遠いだろう。余談だが、段ボールなどで作った人形や音声・チャントを流すアイデアもあるようだ。
さすがにピッチ内の戦術までは変わるとは思えないが(ジョゼ・モウリーニョのバス止めが反感を買うことはないだろうが)、5人の交代枠は監督の手腕、チームの総合力の見せ所だ。
当然出場機会も増える。5人目に起用された若手が大活躍し、一気にスターダムを駆け上がるかもしれない。
試合以外の部分、選手に関しても変わってくる。多くの社会人がリモートワークに移行したように、家でのトレーニングが主体になるかもしれない。そうした状況では自己管理が徹底できる選手の価値が重視される。クラブは管理栄養士の重要性をより深く認識し、エデン・アザールの家の冷蔵庫からケーキを抜く仕事が生まれるかもしれない。
また少ない全体練習で監督の指示をものにしなければならないため、戦術理解度の高い選手の市場価値が上がるかもしれない。現在は実績よりも年齢(若さ)が市場価値に大きな意味を持つが、その潮流が逆になる可能性もある。
再開する意義
先にも言ったようにフットボールは娯楽であり、最優先ではない。しかし世界最高峰のリーグが再開することには、クラブの経済的回復以上に大きな意義と意味がある。
日本でも自粛疲れなどという言葉が広まるように、世界はコロナウイルスとの戦いに疲弊している。我々は疲れた時には必ずエンターテイメントから活力をもらってきた。フットボールという大衆娯楽がコロナウイルスの元でも継続していくのは世界に大きな勇気をもたらすだろう。
確かに人類はまだCOVID-19に対して勝利は収めていない。特にこれまで文明として築き上げてきたエンターテイメントはあまりにも大きなダメージを受けた。外食、旅行、スポーツ・・・。苦しいのは娯楽産業の従事者だけではない。
インターハイや甲子園は中止となり、学生たちは集大成を見せる場所を失った。家族を、国を支える大人たちは週に一度熱狂する瞬間を失った。
コロナウイルスが奪った、我々が失ったものは数えきれない。
しかしそれでも、世界で最も多くの人が愛するスポーツは、フットボールは、再び立ち上がった。再開後の初弾を決めたのは19歳、エーリング・ホーランド。これから先のサッカー界、そして世界のスポーツ界を担っていくであろう神童が大きな「追撃弾」を決めて見せた 。
それはここまで歯を食いしばる世界中の娯楽産業に勇気を与えるゴールだった。
それと同時に、ここまでやられっぱなしだったエンターテイメントという文明が、未知のウイルスに向けて初めて突き刺した反撃の一撃目としても大きな意義があるのだ。
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最後惚れました。